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世界自然紀行

日本、そして世界の植物をめぐる旅

昨日ケープタウンに戻ってきました。
三度目になる南ア植物めぐり旅、終了です。

ブエノスで一月ものんびりしてた後だったので、移動、移動の毎日はなかなかにキツかったです。僕以上に、こんな旅に付き合ってくれたリュウジさんは疲れただろうと思う。どうもありがとうございました。

今回、秋の南アで見たかったのは、①ナマクアランド南部、Brunsvigeaの花の群落、②Hoodia類の花、③その他のスタペリア類の花でした。・・・結果、①はどこも花が終わったあとで、道端に一本見れただけ。②も、ほんの少し時期が遅くで、どこも散った後だった。いやはや残念。特に①がハイライトだったんだけどね。で③に関しては、ちょうどいいシーズンだったようで、Orbea、Duvalia、Huernia、Quaqua、Stapelia、Piaranthusと、かなりいろんなものが見れましたよ。・・・って書いても意味不明だな。またフリッカーに載せます・・・あとは、秋に咲くConophytumの花が少し、といった感じ。一勝二敗。

花に関しては負けた感があるけど、今回は他にもいろいろと初めての体験をできた。南ア三度目にしてようやくサファリに行こうと思い、ナミビア北部のエトーシャに行ってきた。見れたのはシマウマ、キリン、ヌー、オリックス、スプリングボックなどと、ライオンやゾウやサイは見れなかったけど、動物園じゃない自然のなかでシマウマやキリンが草を食んでいる姿には感動でした。

そして旅の締めくくり、あるいは自分への誕生日プレゼント(また年をとってしまったんだなあ)として昨日、ずっとあこがれていたShark Cage Divingにも挑戦してみた。これはね、すばらしかったですよ。値段は高いし、海はクソ冷たいし、サメがケージに近づいてくれた時間はほんの少しだったけど、みんな諦めかけていた中で聞こえた
Shark!!
というガイドの声と手を打つ音、そして水面下にゆらりと姿を見せた黒いシルエット、それは実に感動的でした。なんてったって、あのジョーズの、ホオジロザメですよ。最高に美しく、それに緊張感のある生き物でした。忘れられない思い出になりました。

これから帰国チケットを探します。
残りの数日間、南アのワインと肉を満喫しようっと。
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アルゼンチン北部の話の前に、もう少しだけ南アのことについて書きたい。

南アフリカという国はどうもよくわからないのだ。いや、どの国にしたって「わかっているのはわからないということだけ(だっけ、沢木耕太郎)」なんだろうけど、南アの人たちが何を考えてるのかが、なんとなく掴みにくかった。

植物や自然は素晴らしくて大好きなんだけど、あまり居心地のいい国という感じがしない。旅そのものを楽しめる雰囲気じゃないんだよね。南アを出てアルゼンチンに入ると、ますますその気持ちが強くなった。そのうち、だんだんとその理由がわかってきた。・・・ような気が・・・あくまで気がね、するのだ。

まず、これは決して人種差別とかそういうのじゃないって理解してほしいんだけど、南アの黒人っていうのは、ほんっと、どうしようも無く幼稚で、馬鹿なのだ。前にも書いたように、僕が街を歩いていたりすると(あるいは車に乗っていてすら)、ジロジロと眺めてきて、ときには馬鹿にしてきたりする。信じられない。いい大人が。僕らって、子供の頃から「人をじろじろ見てはいけないよ」って親から教わるよね。人に不快な思いをさせず、余計ないさかいを避けるためには当然のことだと思う。でも彼らにはそういう意識が無い。おそらく背景には南アの人種問題があって、彼らは自分達より少数派で、そして弱い立場のアジア人を見下したいのかもしれない。ほんとに幼稚な、いじめっ子の発想だ。

それに人を利用することしか考えてない。大体にして彼らが"Hey, my friend!”などと声をかけてくるときはろくな事がない。

そんな黒人達が、宿の掃除係をしていたり、スーパーでレジ打ちしてたり、あるいは警察をはじめとした公共機関に勤めている。前回も書いたように彼らには全然仕事を楽しんでいる感じは無くて、とにかくつまらなそうに、嫌そうに仕事をしている。もちろん仕事なんて楽しいことばかりじゃないだろうけど、彼らには仕事の代償として賃金をもらっている、という意識が欠けているような感じがする。自分達がサービスをし、それに対して顧客が金を払うから給料がもらえる。そういうことがわかってない。

でも人種そのものに問題があるわけじゃなくて、その背景にいまだ続く黒人の地位の低さがあるんだと思う。政治の上で黒人と白人の区別が無くなったとはいえ、その間には明らかに貧富の差がみえる。教育のレベルにもきっと差がある。

僕に親切にしてくれたファームの白人達も、自らは西洋風の家具に囲まれた綺麗な部屋でソファに腰掛けてのんびりとコーヒーを飲んでくつろぐ一方、そのファームで下働きする黒人達は敷地の隅っこの小さな家に住み、穴の開いた服を着ていたりする。僕にしてくれたように家に上げてコーヒーを出してくれる、なんてことは、この黒人達には決してしないだろう。嬉しかったけど複雑な気分でもあった。

もちろん全てがこうというわけじゃない。黒人と白人が友達のように仲良くしていることもあるし、しっかりと教養を持った大人の黒人もいることだろう。でも二回にわたる南アの旅で、彼らのイメージはすっかり悪くなってしまった。何人かの白人から言われた"...but, don't trust them.”という言葉も今では理解できる。

一方で、南アの白人に対しても複雑な思いを感じた。田舎のファームを訪ねると、なんとなく哀しいような気分になるのだ。

彼らは、イギリスなりオランダなりから入植してもう長い年月がたって、祖国とはかけ離れた荒涼とした乾燥地に暮らしているのに、西洋風の庭を造り、西洋風の調度の家具を揃え、一生懸命に祖国の生活を維持しようとしている。あくまで自分達の生活スタイルを守り、維持していこうとしているかのようだった。

しかし南アという国の政治を握っているのは今や黒人なのだ、きっと。金銭的にも文化的にも豊かなのは明らかに白人なのだけど、国を動かしているのは黒人。その中途半端な立場の中で白人達は、もしかしたら、「国の事はお前達で勝手にやってくれ。私達にはお金も土地もある。ひっそりと、自分達のスタイルを守って暮らしていくよ」と考えながら暮らしているのかもしれない、と思った。

以上、南アの歴史もろくにわかってない僕の勝手な印象。
複雑な背景をはらんだ国だと思う。一体これからどうなっていくんだろう。

あ、あとひとつ。南アとアルゼンチンの差で、僕に直接的に関わること。それは本屋においてある植物の本の豊富さ。南アという国は、さすがイギリスの文化が入ってるだけあって、植物、とくに野生植物にも関心が高いのか、本屋に行けば野生植物のフィールドガイドの類が豊富に揃っている。それにファームの白人達も、自分の土地に生える植物のことにしっかり関心を持っている。植物めぐりの旅をしている僕にとって、これは本当によかった。ところがアルゼンチンはというと、本屋に行っても野生植物のガイドがほぼ全くといっていいほど無い。スペイン語のごくごくショボイ図鑑が少しあるだけ。フィールドガイドを当てにしていただけに、少々落胆だった。ラテン民族っていうのは、植物なんかより人のほうがいいんだろうね、きっと。

南アの写真。ひとまずラスト。

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Howorthia truncata、園芸名「玉扇」。自生地はオーツホルン郊外の何て事のない丘の斜面なんだけど、石の間やブッシュの影など、足の踏み場もないほど、本当に地面という地面がトルンカータに埋め尽くされていた。初日は自生地を発見できず、二日目には自生地を見つけたものの天気が悪く、三日目にしてようやくまともな写真が撮れた。

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Gibbaeum(=Muiria) hortenseの自生地。例によって石英の白い砂礫地。こいつも同じく、どれが石でどれが植物か区別できないほど沢山生えていた。ちょうどウズラタマゴぐらいの大きさで、細かい産毛が生えている。生き物というやつは、ここまで形を変える事ができるのだ。ここまでしても生きていこうとする。進化ってスゴイ。
ひきつづき南アの写真。
とっておきの写真はまた帰国してからにします(笑)

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ナミビア、Swakopmund近郊にて、Lithops ruschiorum。
おそらく今回旅してまわった中で、もっとも厳しい、「極限の環境」に生きていた植物だと思います。
自生していたのはナミブ砂漠の石英の小さな丘で、そこには真っ白な石ころと花期を終えて枯れたキツネノマゴ科の草本があるだけで、まったく命の気配のしない場所。そんな石ころの間で太陽にさらされながら生えていた。いくらベンゲラ海流からの霧が頻繁にある場所とはいえ、こんな場所で植物が生きていけるのは奇跡としか思えなかった。

SA05.jpg
Kenhardt近郊にて、Dinteranthus。Lithopsを探してファームを訪ね、「うちのveld(原野、フィールド)にはLithopsが二種類あるんだ」という青年に連れられて小さな丘へ行くと、そこにあったのはL. julliiとこのDinteranthusだった。彼らにしてみれば同じ「Beeskloutjie(「牛の足型」の意味)」なのだけど、
僕には予想外の収穫だった。白い石英の中で一度目を離すとなかなか見つけられない、石としか思えない植物だった。
ブエノスの日本人宿に着きました!
ものすごく環境がいいので、何枚か写真をアップします。

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Calvinia近郊にて、キク科の花のカーペット。美しい。本当に信じられない光景です。

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Pofadderにて、Lithops jullii。石灰岩の砂礫の中で見事に擬態してます。これが始めてのリトープスだったので、その感動ったらなかったです。

SA3.jpg
Alexanderbaaiにて、Fenestraria。これも感動的でした。完全に砂の中にもぐってます。これなんてまだ上に出ているほう(笑)
一週間のんびりとケープタウンですごしているうちに、なんだか砂漠を走り回ってたくさんの不思議な植物を見てきたのが夢だったような気がしてきた。けれどあれは夢なんかじゃなく、僕は間違いなく数々の貴重な植物を目にしてきたのだ。

写真が用意できなかったので文字だけになってしまうけど、二年前の旅よりさらに多くの植物を見ることができた。Namaqualandの周辺では、一年草のキク科植物が織り成す一面の花の絨毯を見ることができた。RichtersveldやBushmanlandではLithops、Fenestraria、Titanopsisといった前回は見ることのできなかった植物に出会えて素晴らしかった。ナミビアは道は悪いし物価は高いし、あまり楽しい思いではないけど、Adenia pechueliiを見つけられたのがラッキーだった。再び戻った南ア、Great KarooやLittle Karooでは、Pleiospiros bolusii、P. nellii、Haworthia truncata、H. maughaniiといったへんてこな植物、そしてなんといってもMuiria(Gibbaeum) hortenseaeの自生地が感動的だった。最後の締めくくりはTanquanaとDidymaotus。自生地に着いたのはちょうどお昼。ちょうど次々とDidymaotusの花が開きだすところで、それは見事な眺めだった。これを見たとき、「ああ、やりきったな。ずいぶんといろんな植物を見てきた。まだまだ見てないものもあるけど、もう未練は無いな。これでひとまず終わりだな」という気分がこみ上げてきた。・・・すぐにまた未練は出てきたけど。

今回多くの植物を見ることができたのは、間違いなく多くの人の助けのおかげだと思う。前回はひたすら一人の力で植物を探していたから、どうしても限界があった。というのも、南アの珍しい植物の自生地はほとんどがファームの私有地の中にあるからだ。そこで今回は積極的にファームを訪れることにした。最初は軽くあしらわれるんじゃないかと思っていたんだけど、彼らの多くは遠路はるばるやってきた奇妙な東洋人に非常に好意的だった。僕が探している植物の名を告げると、「それならうちのファームに生えてる」と車を走らせてその場所まで連れて行ってくれたり、あるいは自分のファームに無い場合でも、「知り合いのファームに電話して聞いてあげるから、ちょっと座ってコーヒーでも飲んでいなさい」と家に迎えてくれたりした。この人たちの助けが無かったら、今回の旅でも大した成果は得られなかったかもしれない。本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。

・・・おっと、えーと、もっと書きたいんですけど、いつの間にやらネットカフェの料金が結構になってるので、また機会を見て更新します。明日、ブエノスアイレスへ発ちます。さらに多くの植物に出会えることを期待して。